本格IT時代の事業戦略〜キーワードは「共生・共有」〜 ―2002年3月5日横浜産業振興公社に於けるパネルディスカッション用原稿― |
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株式会社アイ・シー・アイ 代表取締役 首席研究員 池田志朗 |
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1.インターネットは人間の繋がり方を変えた ここ数年IT時代と騒がれたかと思うと、すぐにITバブルが弾けたなどど叫ばれ、まことに慌しく時代が流れているかのように見える。 ところが一歩引いてこの事態を見ると、騒いでいるのはいわゆるIT関連産業が主で、一般企業はその熱に当てられたり風に吹かれたりしているだけで、数年前と余り変わっていないところが多いようだ。 確かにPCに値段は安くなったし、事業所のあちこちにPCが置かれるようになった。またこの数年間の携帯電話の普及は目覚しいものがあり、国内では昨年すでに固定電話の台数を追い越してしまっている。 中国などはもともと固定電話のインフラが整っていなかったこともあり、爆発的に携帯電話が普及し、誰もが持っている状態を出現させている。 この携帯電話が作り出した状況は産業面というよりも社会のコミュニケーションのあり方、もっと言うなら人間の繋がり方を一部変えるところまで来てしまった。 つまりインターネットの本質は人間の繋がり方を変えたところにある。 特に不自由なキー操作にもかかわらず、携帯電話でのメールのやり取りが非常に大きくなっており、電話会社の予測をはるかに超えて、通話よりメール偏重になった為、ついに携帯電話の普及が飽和状態になったことも手伝って、軒並み収益悪化に陥っている。 メールで付き合う人間間の繋がりの希薄化は社会学的観点から解明されるだろうし、もちろんこれに関連して補完型のビジネスチャンスも考えうるだろう。 しかし今日、ここで考えたいのはもっと本質的なところでの変化が起こっているのではないかと言うことである。 いうならばメール型人間関係の補完ビジネスというのは、どうしてもニッチ型に近い二次的なマーケット発想の印象がぬぐえない。 ここで扱いたいのはこうしたITを生み出し、ドライブをかけている力が、我々をどこに持って行こうとしているのかということだ。 2.発端は環境問題 そこで確認して置きたいことがある。 ITつまり電子的な技術を使った情報技術とでも言えばよいのだろうか、このITはあくまでも社会の道具であると言うことなのである。 当たり前のように見えて、ここのところがとても重要なのだ。 ITが生まれる前に、道具と社会の関係に大きな変化が起こってしまっていたことが、この道具であるITに大きな意味を与えていることを思い出さねばならない。 それは「環境問題」なのだ。 どなたも「そんなことは知っている。でもそれがビジネスにどう繋がるんだ」ということになる。 もしくは、現実は汚いことをやりながら、なんとかごまかしながら進んでゆくものだから、きれいごとでは何も進まないとおっしゃるかたもいると思う。 そこでちょっと戻って、革命的技術と社会の幸せな関係があったかに見えた時代を振り返って見たい。 18世紀の産業革命で蒸気機関が生まれたが、それだけでは意味をなさず、汽車になったとき、また紡績機になったときこれは革命が起こった。 その結果、18世紀後半から19世紀前半の英国の都市はどうなっただろうか? バーミンガムだったと思うが、余りの煤煙のひどさでは肺結核が広がり、都市居住者の平均寿命が25歳という事態にまでなった。 都市の環境があまりにひど過ぎた為に、そこから今日のニュータウン発想が生まれて来るのだが、いずれにしても当時の産業革命からは20世紀にまで続く環境汚染と過密と言う都市問題が継続して発生し、次々とその対症療法が投入されて来た。 これがとうとう地球規模での破綻として見えて来たのが、「成長の限界」「沈黙の春」などの環境問題の古典が書かれた1960〜70年代だった。 また産業革命は資本の集中も進め、そこから2度も世界大戦を生み出した。 こうした共通体験を持った時代に出てきたのがIT技術であり、IT革命なのだ。 3.ネットワーク型社会を導く アルビン・トフラーが「第3の波」と言ってエレクトリックコテージなる概念を出してもう20年程経った。彼は今日のIT革命を予測した。 細かい点では逆行するかのようなところも出ては来るだろうが、社会の大きな流れは地球規模での環境汚染、温暖化等の阻止と状況の改善の方向に動いていかざるを得ない。 こうした大きな正の方向の流れを理解した上で、「社会の道具としてのIT」を考えねばならない。 かつての18世紀の産業革命で登場した機関車や紡績機にあたるのが、今日のインターネットやPC、それに携帯電話だと考えられる。 そうすると、有限な地球の中で、できるだけ環境負荷を抑えた活動を追及することが、ITという道具を使いこなす上でのキ−ワードになるはずだ。 この「地球規模で環境負荷を抑える」との文脈で見て行くと、21世紀という時代は20世紀と違って、 「巨大な資本の集中を避けてネットワーク型でことに当る」 そんな大きな流れに沿った事業が求められることが見えて来る。 ここにITを軸にしたビジネス展開の第1の視野が開けている。 そうするとITの持っている以下の特性が俄然として輝いて見えて来る。 @ 情報の無償提供という“ボランティア性” A 草の根運動的な“自己増殖性” B 人間自身の「メディア性」の増幅 【個別説明省略】 4.ネットワーク型事業の可能性 インターネットによって出現した情報空間は、従来の西欧型社会と異なる。 絶対的な個人を主体を軸に考えるのではなく、人間はすべて網の目のように繋がった存在であり、相互に影響を受け・与え・響き合うものが人間だと見る。 だから一見頼りないように見えて、強固な網状の組織や発想をとる事が求められる。 こんな地点から見ると、批判の多い携帯メールでの繋がりの世界も、意外に可能性が開けるのかも知れない。 具体的に例を挙げよう。 インターネットは元はと言えば軍事技術だったが、いまやこれを管理しているのはNGOだ。 NGOと言っても、先日話題になったアフガン関係のジャパンプラットフォームと言う組織は、あれだけ政府からの資金で運営されていれば、多分英国流に言うと、QUANGO※(似非 非政府組織)に当るだろう。 ※Quasi Autonomous Non Government Organization インターネットのドメイン管理等、利用者の利便性と安全性等を図っているのは、今のところ民間のネットワーク組織となっている。 そこで流されている圧倒的な情報量は自主的に流され、そのほとんどが課金されることなく利用されている。 情報量の利用のされ方もドンドン膨れ上がってしまい、もう誰も一元的な管理など出来なくなっている。 もちろんエシュロンなどと言う米英の軍事盗聴システムがあるが、おもしろいもので、国家側が非公然活動として地下に潜る時代なのだ。 元々中国などがそうだが、「著作権」と言う概念も、ひょっとしたら20世紀の遺物なのかも知れない。 さて利用する側からのITの捉え方は、こんな風にまとめられると思う。 @ITが出てきた背景にはもともと「地球環境問題」があった Aより細かくは低環境負荷の、低エネルギー消費、エネルギーや資本の集中を忌避し、 自助努力、ボランティア等の指標に則った行動を採る B これらはネットワークを担う主体群による「共生、共有」の成否にかかっている 通常は大資本が必然的に勝つ筈の事業フィールドであっても、これらの3つのを緻密に組み合わせることで、ITを活かした真の21世紀型事業を成功に導けるはずである。 その典型的な例としてオフィス用品の宅配型事業「アスクル」の成功が挙げられる。 【説明略】 →参照:筆者個人サイトでの説明、 アスクルの公式サイト |
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